毎日毎日、大根、白菜、チンゲンサイなどの野菜に、モズクや昆布の根っこを入れてまとめて煮込み、それを三食に分けて食べていた。
そんな食事を知った友人は「たいへんやねえ」と声をかけてくれたが、Nさんは「そんなこともないよ」と明るくふるまっていた。
好きなものを食べたいのはやまやまだが、「これがTちゃんのためにはいいんだ。
がまんすれば、きっとアトピーは治る。
いまに見ていろ!」と内心思っていた。
しかし、ストレスは大きく、そのはけ口は主食のさつまいもに向いた。
「さつまいもはふかしたり焼いたりして食べてたんだけど、甘くておいしいでしょ。
だからつい食べすぎて、一日三本までと言われてたのに、六本ぐらい食べてたわ。
おかげで1〇キロも太ってねえ。
よく妊婦さんと間違えられたなあ」やがて、湿疹の症状はおさまっていき、徐々に魚などを増やしていくことができた。
でも、一進一退で、精神的には不安定だった。
食事療法を続けながら。
アトピーに効くと言われればなんでも試してみた。
「ヨモギ風呂にニンニク風呂でしょ。
スギナやタンポポも煎じて飲んだ。
タンポポはきつすぎてよけいに赤くなったけど。
それに、お湯と水に交互につける温冷浴。
Tちゃんはヒエーって叫んでるのに、おかまいなしに水にジャブンとつけてたわ(笑)」当時のNさんは、とにかく子どものアトピーを治すことしか考えられなかった。
食べてはいけないと言われているものは、神経質なぐらい、決して口にしなかった。
ある日、おじいちゃんが少しぐらいならいいだろうと思い、タケノコを食べさせた。
Nさんは口に指を突っ込んで、それを吐き出させるぐらいだった。
「京都のT病院にもかかっていて、そのとき先生に『お母ちゃんがもっとリラックスせなあかん』って言われたんです。
私もそう思うけど、できない。
食べてもっとひどくなったらどうしよう、という恐怖心が先に立って。
先の見通しがつかないのもすごく不安だった」「お父さんは、そのうち治るからボチボチやれって言うし、おじいちゃんも、もうちょっとのんびりしたら、って言ってくれてた。
だけど、そのときはまわりの声に耳を傾けられなかった。
きっとこれで治るから、もうちょっと見てて、絶対に私が治してみせる、という気持ちが強くてねえ」顔はかきむしるため、血と汁でグシュグシュ。
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